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+++スノーホワイト <現代版BASARAダテサナ>+++++++++++++++
朝から冷え込んだある日のこと。
珍しくちらちらと雪の舞い始めたその街の中を一台の黒いバイクが疾駆していた。
黒に黄色のペインティングが鮮やかなヘルメットの奥に光る瞳は一つ。
「…ったく、あいつら…。ふざけるのも大概に……?」
漸く住み慣れたマンションの駐車場に入ろうとしていた政宗の目に見慣れた人影が映り、きゅ、と言う音を立てて慎重にブレーキをかけた。
「………あ、いつ…っ!」
政宗は慌てて愛車を停めるとすぐさまその人影に走り寄った。
「幸!お前そんなところで何してんだ!」
「政宗殿!」
叱り付けようとした政宗の一瞬の隙をついて、その胸元にぽすん!という音を立てて埋まる幸を政宗は抱きとめないわけにはいかず。
つい嬉しそうに抱きついてくる幸を受け止めてその温もりにほっとしそうになり、慌てて引き剥がした。
何ゆえ?と小首を傾げる幸の首に自分が巻いていたマフラーを解いてぐるりと巻きつける。
「こんな寒い時に外で何やってんだ。ようやく風邪治ったばっかりだっていうのによ…」
呆れたような声で呟いてから、政宗は幸の体を包み込むように抱き締めた。
触れ合わせた頬は冷たく、どれほどの時間此処で待っていたのかと政宗を不安にさせた。
するともぞもぞと幸が政宗の腕の中で身じろぎし、ひょこりと政宗を見上げた。
「……言いたかったのでござるよ…」
「Un?」
眉根を寄せ、何のことだと見つめる政宗を幸はじーっと見つめ、少し恥ずかしそうにしながら微笑んだ。
「…おかえりなさいでござる」
抱き締めた身体より、触れ合わせた頬よりも、胸にほわりと太陽の温もりが灯ったようだった。
「……ただいま…」
せめてこの胸の温もりが伝わるようにと包み込むように抱き締め、囁く。
「ま、政宗殿、こ、こんなところでは恥ずかしいでござる…」
幸も口ではそんなことを言いつつも、背中に腕を回し、同じ力で抱き返しながら微笑んだ。
そんな言葉に小さく笑いを零すと、政宗は抱擁を解きぴょこぴょこと跳ねている髪を撫でた。
「ここじゃ寒いしな…帰るか、幸」
こっくりと頷いた幸の肩を抱き、心持ち早足で政宗はエレベータホールへ向かう。
幸も政宗の背中を控えめにきゅっと握ると、ちょこちょことした足取りで寄り添いながら歩いていく。
エレベータが下りてくるのも待ち遠しいように、他愛ない話をしながら二人で笑いあう。
先を争うように小さな箱へ入り込むと、ドアが閉まると同時に示し合わせたように口付けた。
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